AIで効率化しやすい仕事、しにくい仕事

AIで楽になりやすいのは、答えを決める仕事より、探す仕事と下書きを作る仕事です。過去の資料から条件を探す、以前の似た対応を見つける、マニュアルにない問い合わせの返事を下書きする。この3つです。

議事録やメールの下書きも便利ですが、現場で時間がかかるのは「前の資料はどこだっけ」という作業の方です。金額や補償のように、間違えると困る判断は人が残します。

向いている仕事の見分け方

出力を人が確かめられ、間違えても直せる仕事が向いています。

観点効率化しやすい慎重に扱う
AIの役割検索、比較、下書きまで最終判断まで任せる
確認方法資料や記録と人が照合できる専門家や責任者の判断が必要
間違えた影響直せば元の業務に戻せる顧客や社員の権利、お金に直結する
扱うデータ使ってよいと決めた文書や記録個人情報、未公開の取引条件
仕事の進め方手順や判断材料が残っている担当者の経験だけで回っている
効果の測り方検索、確認、修正の時間を比べられる「便利になった」という感想しか残らない

「効率化しやすい」側が多い仕事は、小さく試せます。「慎重に扱う」側が多いなら、ツールを探す前に、誰が何を確認するかを決めた方がよいです。

試しやすい3つの仕事

途中から入った人が、過去の資料を探す

人が途中で代わると、検討資料を最初から読み直す時間がかかります。知りたいのは、資料の全文ではなく「この条件は、どのファイルのどこに書いてあるか」です。

AIには、その質問と、見てよい資料だけを渡します。回答には、参照したファイル名を付けます。表は列の意味が分かる形に整えてから渡します。金額、納期、担当者は、元の資料と人が照合します。

古い記録から、似た対応を探す

同じトラブルへの対処が、担当者の記憶と古いファイルに分かれていることがあります。

日鉄エンジニアリングの事例では、海洋工事で10年以上たまった約1,700件の記録を、チャットボットで探せるようにしています。技術部の6,000件以上の技術資料や、40年以上前からの設備の整備記録も対象です。回答には参照したファイル名が出るので、過去の事例を見てから作業できます。

同社の事例では、起動に手間がかかり、最初は一部の人しか使っていなかったと書かれています。社内のアプリ一覧から開けるようにして、そこを改善しています。検索の精度だけでなく、普段の仕事からすぐ開けるかも大事です。

修理履歴、クレーム対応、失注メモでも、日付、対象、起きたこと、対処が残っていれば同じ探し方ができます。頭の中にしかない経験は探せません。

この「自社の資料を先に探してから、その内容で答える」やり方を、RAG(検索拡張生成)と呼びます。AIがもともと知っていることだけで答えさせないための仕組みです。

マニュアルにない問い合わせの下書きを作る

よくある質問は、FAQに書けば足ります。時間がかかるのは、その外側です。

損保ジャパンは2025年6月、営業店や本社への照会に対して、マニュアルやQ&Aをもとに回答案を出す仕組みを使い始めました。画面には回答案と参照した資料が並び、最終的な返事は人が作ります。

自社でも、保証、返品、適用条件のように「これは対象か」で迷う問い合わせから試せます。下書きと参照箇所を出し、料金や例外は人が決めます。検索に使う文書は、正式版と下書きを分け、参照したファイル名を画面に出す前提を先に決めます。

件数のグラフを渡して「次の施策を書いて」と頼むと、文章は整います。ただ、次に何をするかは、現場を知っている人が決める仕事です。

任せきらない方がよい仕事

契約や知的財産、税務、会計、人事評価は、AIの回答をそのまま決めごとにしない方がよいです。与信、返金、投資、資金繰りも同じです。

資料の要約や、確認したい論点の洗い出しには使えます。決めるのは、社内の責任者や、必要なら専門家です。

入力してよい情報を先に決める

顧客名や未公開の条件を、確認せずに入れない方がよいです。利用するサービスが、入力内容をどのくらい保存するのか、学習に使うのかを先に見ます。

社内では、入れてよい情報と入れてはいけない情報、出力を確認する人、間違いの直し方、ログを見られる人を決めておきます。

最初は1つの仕事で試す

全社で一斉に始めると、何が良くなったのか分かりにくくなります。たとえば例外の問い合わせなら、次の範囲に絞ります。

  1. FAQで答えられる質問は外す
  2. 質問と、関連する規程、過去の回答だけを渡す
  3. AIは回答案と参照箇所を返す
  4. 担当者が条件と金額を確認して送る
  5. 直した理由、作業時間、誤りを記録する

続けるかどうかは、AIを入れたかどうかではなく、担当者の手間が減ったかで判断します。

開発が必要かを先に見る

公開できる資料だけなら、既製のAIサービスでも試せます。少人数で試してから、個別開発が必要かを判断した方が、費用を抑えられます。

個別開発を考えるのは、部署や役職ごとに見られる文書を分けたいとき、今のシステムとつなぎたいとき、参照資料と回答を同じ画面で確認したいときです。修正の履歴を残して改善したい場合も同じです。

相談した会社が、何でも作ろうとせず「この範囲は既製サービスで足ります」と言えるかも見ておきます。

会社は、今回の仕事との相性で選ぶ

1部署の小さな検証なら、実装する人と直接話せて、小さく始められる会社が合います。基幹システムや複数部門が関わるなら、セキュリティと保守まで体制を組める会社が候補です。何に使うか決まっていないなら、業務の整理から相談できる会社を探します。

中小企業では、少ない金額で試せること、月額費用の見通し、担当者が変わったときの対応を確認します。大企業の部門で導入するなら、情報システム、セキュリティ、法務、調達の条件を先に集めます。全社のAI基盤と重複しないか、あとから他部門へ広げられるかも見ておきます。

見積もりは、作ったあとの費用も並べる

初期費用に、資料の整理、業務整理、PoC、本番開発のどこまでが入っているかを確認します。クラウドやAIの利用料、資料の更新、回答の確認にかかる社内の時間、保守、追加改修、終了時のデータ移行も含めて比べます。

導入前の作業時間、件数、確認時間、修正件数を残しておくと、あとで効果を見られます。回答を作る時間が短くなっても、確認や修正が増えれば、全体では楽になっていません。

費用の内訳は、AIシステム開発の費用は何で決まるかで整理しています。

各社には、同じ質問を渡す

金額が違うときは、会社の力量より、提案に含まれる作業が違うことがあります。

  1. 対象に含む仕事と、含まない仕事
  2. 参照する資料と、更新する人
  3. PoCで試す質問と、合格の条件
  4. 誤答や回答できない質問を、誰へ戻すか
  5. 初期費用、月額、資料整備、追加改修の金額
  6. データとログの保存場所、契約終了時の引き継ぎ

「精度が高い」「AIに強い」という言葉だけでは比べられません。自社の質問と資料でどう評価するのか、運用後に誰が直すのかまで聞くと、違いが見えます。

相性は、短い仕事で確かめる

話しやすい営業担当でも、開発が進めやすいとは限りません。本番の前に、短期間の業務整理やPoCを別に頼むと、進め方が分かります。

実装する人と直接話せるか。決まったことと未決のことを文書に残すか。問題を早めに共有するか。モデルの説明より先に、使う資料、試す質問、確認する人を聞くか。このあたりを見ます。

分からないことをそのまま伝え、不要な機能は「作らなくてよい」と言える会社なら、発注後も相談しやすいです。比較の項目は、AIシステム開発会社の選び方にまとめています。

まとめ

始めるなら、議事録の要約より、過去資料の検索、似た対応の抽出、マニュアルにない問い合わせの下書きが向いています。1つの仕事に絞り、参照箇所と人の確認を付けて試すと、効果と問題点が見えます。

個別開発が必要になったら、会社の知名度や最初の金額だけで決めない方がよいです。作ったあとの費用、自社の作業、担当者との進め方まで比べると、合う会社を選びやすくなります。

ウィステリアコードでは、AIを使う業務の整理から、小規模なPoC、業務改善ツールの開発まで相談を受け付けています。既製サービスで足りるか分からない段階でも、お問い合わせからご相談ください。