初回相談で確認している10の質問

初回相談では、完成された仕様書や詳細な画面設計がなくても問題ありません。

ただし、「誰が使うのか」「何に困っているのか」「いつまでに必要なのか」「作らないものは何か」が分かると、相談の時間を有効に使いやすくなります。

この記事では、中小企業の経営者や、必要に応じてスタートアップCTOが、初回相談の前に把握しておくとよい10の質問を整理します。

結論:初回相談では「作るもの」より先に「判断材料」を確認する

初回相談で確認したいのは、細かな機能一覧ではありません。

まず確認するのは、次の10項目です。

  • 誰が使うのか
  • 何に困っているのか
  • 現在はどう運用しているのか
  • いつまでに必要なのか
  • 予算の目安はあるのか
  • 既存ツールや既存データはあるのか
  • 個人情報や機密情報を扱うのか
  • 誰が保守、運用するのか
  • 何をもって成功とするのか
  • 最初は作らないものは何か

この10項目が分かると、最初に作る範囲、後回しにする範囲、既存ツールで代替できる範囲を整理しやすくなります。

すべてを正確に決めておく必要はありません。「まだ未定」「相談しながら決めたい」という状態でも大丈夫です。むしろ、未定の部分を早めに共有した方が、現実的な進め方を考えやすくなります。

1. 誰が使うのか

最初に確認するのは、システムやツールを使う人です。

同じ業務改善ツールでも、社長だけが確認するのか、現場担当者が毎日入力するのか、顧客も画面を使うのかで、必要な設計は変わります。

初回相談では、次のような点を確認します。

  • 主に使う人は誰か
  • 管理者、現場担当者、顧客など、利用者の種類はいくつあるか
  • それぞれの利用者が何を入力、確認、承認するのか
  • パソコン中心か、スマートフォン中心か
  • ITツールに慣れている人が使うのか、慣れていない人も使うのか

利用者が多いほど、権限管理、画面の分かりやすさ、操作ミスを防ぐ設計が重要になります。最初の相談では、全員の細かな操作を決めるよりも、誰が中心利用者なのかを整理できれば十分です。

2. 何に困っているのか

次に確認するのは、現在の困りごとです。

「予約システムを作りたい」「顧客管理をしたい」「AIを使いたい」という要望だけでは、解決すべき課題が見えにくいことがあります。

初回相談では、次のような言い方で十分です。

  • 転記作業に時間がかかっている
  • 担当者によって対応方法が違う
  • 進捗状況が見えない
  • 顧客への連絡漏れが起きている
  • Excelやスプレッドシートが複雑になりすぎている
  • 社内問い合わせが特定の人に集中している

大切なのは、最初から解決策を決めきることではありません。まず「どの業務の、どの場面で、誰が困っているのか」を言葉にすることです。

困りごとが整理できると、必要な機能だけでなく、既存ツールの設定変更や運用ルールの見直しで足りる部分も見つけやすくなります。

3. 現在はどう運用しているのか

新しいシステムを考える前に、現在の運用を確認します。

今の運用には、面倒でも業務上必要な確認、社内の暗黙ルール、顧客対応上の事情が含まれていることがあります。そこを確認しないまま作り始めると、完成後に現場で使いにくくなる可能性があります。

初回相談では、次のような点を聞きます。

  • いまは何を使って管理しているのか
  • Excel、スプレッドシート、メール、チャット、紙の書類をどこで使っているのか
  • 誰が入力し、誰が確認し、誰が承認しているのか
  • 例外対応はどのように処理しているのか
  • 月次、週次、日次など、どの頻度で作業しているのか

現在の運用は、きれいな業務フロー図でなくても構いません。口頭で流れを説明するだけでも、開発範囲を考えるための重要な材料になります。

4. いつまでに必要なのか

期限は、開発範囲を決めるうえで重要です。

同じ要望でも、「できるだけ早く試したい」のか、「繁忙期前に一部だけ使いたい」のか、「既存ツールの契約更新前に判断したい」のかで、進め方は変わります。

初回相談では、次のような点を確認します。

  • いつから実際の業務で使い始めたいのか
  • その期限にはどのような理由があるのか
  • 最初から全機能が必要なのか、一部だけ先に使えればよいのか
  • 社内確認、データ移行、操作説明の時間を見込む必要があるのか

期限が近い場合は、すべてを一度に作るよりも、最初に必要な機能だけに絞る方が現実的です。期限の理由を共有してもらえると、優先順位を一緒に整理しやすくなります。

5. 予算の目安はあるのか

予算は、正確な金額でなくても構いません。

初回相談では、次のような考え方を確認します。

  • まずは小さく検証したいのか
  • 今年度内に使える予算があるのか
  • 初期費用を抑えたいのか、月額費用を抑えたいのか
  • 将来的な拡張も見込んでいるのか
  • 既存ツールの利用料と比べて判断したいのか

予算感がまったく分からない場合でも、「大きな投資はまだ難しい」「まずは最低限で試したい」「社内稟議のために概算を知りたい」のように共有できれば十分です。

予算を隠したまま相談すると、提案の幅が広がりすぎることがあります。最初から制約を共有した方が、小さく始める案、段階的に作る案、既存ツールを活用する案を比較しやすくなります。

6. 既存ツールや既存データはあるのか

現在使っているツールやデータがある場合は、初回相談で確認します。

新しくすべてを作るよりも、既存ツールを活かした方がよい場合があります。一方で、既存データの形式や運用ルールによっては、移行や連携に注意が必要です。

確認したいのは、次のような点です。

  • 現在使っているツール名
  • 継続して使いたいツール
  • 置き換えたいツール
  • Excel、CSV、スプレッドシートなどの既存データ
  • データの項目名や件数の大まかな規模
  • 外部サービスとの連携が必要か

初回相談の段階では、実データをそのまま共有する必要はありません。まずは、どのような項目があり、どの形式で管理しているかが分かれば十分です。

7. 個人情報や機密情報を扱うのか

個人情報や機密情報を扱うかどうかは、初回相談で必ず確認したい項目です。

顧客名、住所、電話番号、メールアドレス、問い合わせ履歴、契約情報、従業員情報などを扱う場合は、保存場所、アクセス権限、共有方法、バックアップ、削除の扱いを慎重に考える必要があります。

初回相談では、次のような点を確認します。

  • 顧客情報を扱うのか
  • 従業員情報を扱うのか
  • 問い合わせ内容や相談内容に機密情報が含まれるのか
  • 社外のサービスにデータを送る可能性があるのか
  • 誰が閲覧でき、誰が編集できるべきなのか
  • 退職者や外部委託先のアクセスをどう管理するのか

個人情報に該当するか、どのような取扱いが必要かは、事業内容やデータの内容によって変わります。個人情報保護委員会は、事業者向けに「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」などを公開しています。実際の運用では、必要に応じて専門家にも確認することが重要です。

8. 誰が保守、運用するのか

システムは、作って終わりではありません。

公開後には、問い合わせ対応、軽微な修正、利用者追加、データ確認、外部サービスの設定変更、障害時の連絡などが発生することがあります。

初回相談では、次のような点を確認します。

  • 社内で日常的に管理する人は誰か
  • 利用者の追加や権限変更を誰が行うのか
  • 不具合や問い合わせが起きたとき、誰が一次対応するのか
  • 操作マニュアルや引き継ぎ資料が必要か
  • 開発後の保守をどの範囲で依頼したいのか

運用担当者が決まっていない場合は、機能を増やしすぎると管理できなくなることがあります。小さな会社では、便利な機能を増やすことよりも、社内で無理なく回せる形にすることが大切です。

9. 何をもって成功とするのか

成功条件を決めておくと、作る範囲を判断しやすくなります。

成功条件は、必ずしも大きな数値目標である必要はありません。最初の段階では、業務上の変化を言葉にするだけでも十分です。

確認するのは、次のような観点です。

  • 転記作業を減らしたい
  • 対応漏れを減らしたい
  • 案件の状況をすぐ確認できるようにしたい
  • 特定の担当者に依存している作業を分散したい
  • 顧客への連絡を安定させたい
  • 社内確認の回数を減らしたい

成功条件が曖昧なままだと、機能追加の判断が難しくなります。反対に、「まずはこの業務が楽になれば成功」と決めておくと、初期開発の範囲を絞りやすくなります。

10. 最初は作らないものは何か

初回相談では、作りたいものだけでなく、最初は作らないものも確認します。

小規模Webシステム開発や業務改善ツール開発では、最初からすべてを作ろうとすると、費用も期間も大きくなりやすくなります。最初に作らないものを決めておくと、必要な部分に集中しやすくなります。

検討しやすいのは、次のような項目です。

  • 管理者だけが使う機能は後回しにできるか
  • デザインの細部は初期段階では簡素にできるか
  • 自動連携ではなく、最初はCSV取り込みで足りるか
  • 通知機能は最初から必要か
  • スマートフォン対応はどこまで必要か
  • AI機能は初期検証の後に判断できるか

「作らないもの」を決めることは、諦めることではありません。最初に必要な範囲を明確にして、使いながら次の改善を判断するための整理です。

初回相談前に完璧な資料は必要ない

ここまで10の質問を紹介しましたが、すべてに答えられないと相談できないわけではありません。

初回相談の時点では、次のような状態でも問題ありません。

  • 利用者は大まかに分かっている
  • 困りごとはあるが、機能には落とし込めていない
  • 現在の運用は口頭で説明できる
  • 期限や予算はまだ幅がある
  • 既存データの中身をまだ整理できていない
  • 個人情報を扱う可能性があるが、範囲は未整理
  • 保守や運用担当者はこれから決める

むしろ、最初から細かく決めすぎるよりも、現状と制約を共有しながら、作るべきものと作らないものを一緒に整理する方が進めやすいことがあります。

まとめ:初回相談は、発注を決める場ではなく整理する場

初回相談では、すぐに発注するかどうかを決める必要はありません。

大切なのは、誰が使い、何に困っていて、現在どう運用しており、どの期限と予算の中で、どこまで作るべきかを整理することです。

特に中小企業の小規模Webシステム開発や業務改善ツール開発では、最初から大きく作るより、現在の業務を確認し、成功条件を決め、作らないものを明確にする方が失敗しにくくなります。

ウィステリアコードでは、小規模Webシステム開発、業務改善ツール開発、SaaS MVP開発、生成AI活用の初期検証について、発注前の要件整理から相談できます。

「何を相談すればよいか分からない」「まだ資料が整っていない」という段階でも、まずはお問い合わせからご相談ください。

参考